今年は、1872(明治4)年に、日本で初めて新橋―横浜間に鉄道が開業してから、150年という節目です。もはや鉄道は生活を支える空気のような存在になっています。それゆえ、貴重な存在にもかかわらず、価値があまり知られていないかもしれません。
例えば、新幹線。出張や旅行で当たり前のように使っていますが、実は、新幹線が「世界の鉄道史を変えた」といっても過言ではありません。
新幹線は1964(昭和39)年、前回の東京五輪の年に開業しました。当時、欧米は自動車の時代です。モータリゼーションという言葉が席巻し、鉄道輸送は時代遅れになりつつありました。
そんな時に、極東の島国が世界初の時速200キロ超で走る高速鉄道をスタートさせたのです。その利便性、速達性は、鉄道輸送の可能性を世界に発信するものでした。
その後、10年もたたずに世界は石油ショックに見舞われ、省エネの観点から鉄道輸送が見直されました。
フランスのTGVや、英国のHST、ドイツのICEなど、時速200キロ以上で都市間を結ぶ高速鉄道が次々と実用化されました。スペインAVE、英仏海峡トンネルを利用したユーロスター、韓国のKTX、日本の新幹線技術を導入した台湾新幹線…。