私は、25歳の時からおよそ半世紀にわたり泉さんの薫陶を受けてきた。私が、いくつかの博覧会や大規模イベントのプロデューサーを務めることができたのも、泉さんの支えがあったからこそだった。25年大阪万博で会場運営プロデューサーに任じられた石川勝さんも、いわば「泉組」の一人だ。
私は年末から膨大な数のハードディスクを机の上に並べデータの整理中だった。泉さんの訃報を受けた日、偶然、泉さんに「万博って何ですか?」とあえて聞いた音声記録を古いハードディスクで見つけたのだ。愛知万博の直前に、私と古見修一さん(空間プロデューサー、ドバイ万博の仕事も担当)が師を囲んで行った鼎談(ていだん)記録だ。その中で泉さんはこう語っていた。
「人類はね、4500年前のモヘンジョダロ文明の時代から万博をやっているんです。博覧会ほど、すべての人が楽しみ、すべての人が喜び、あとあとまで地球に生きていてよかったな、と思わせる催し物は万国博覧会だけです」
逝去された日に出てきた泉さんの声の記録は、25年大阪万博に伝える最後のメッセージに思えた。泉ご夫妻(夫人はシャンソン歌手、瀬間千恵さん)の意向で葬儀は近親者のみ無宗教で行った。私たちは手作り葬儀のお手伝いをしたが、泉さんの薫陶を受けた泉組が集い「泉イズム」を語り合う会を3月末に開催しようと話し合っている。コロナの第6波が収まってくれれば、だが。