2020年2月3日に、乗客・乗員約3700人を乗せた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に入港したときから、日本政府の新型コロナウイルスとの闘いは始まった。
安倍晋三、菅義偉、岸田文雄という3代の政権がコロナ対応にあたるなか、感染の収束がいまだ見えない事態が続いている。海外では日本以上に新たな変異株「オミクロン株」による感染爆発が起きている。
「最悪の事態」を想定して対応するのが危機管理の鉄則であり、国家の危機管理の最高責任者である首相の決断・方針は重要な意味を持つ。
1月17日に召集された通常国会の施政方針演説で、岸田首相は「次の感染症危機に備えて、本年6月をめどに、危機に迅速・的確に対応するための司令塔機能の強化や感染症法のあり方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応をとりまとめる」としている。
ここで岸田首相が述べている「司令塔機能」とは、昨年9月の自民党総裁選の公約に掲げた「健康危機管理庁」と思われる。だが、政府内には、病床確保や都道府県との調整、緊急時の行動制限の検討といった役割は各省庁にまたがることから、感染症危機対応を一元化する健康危機管理庁の創設には消極的な空気が漂っている。さらに、「一から組織をつくるのは人材確保を含め、非現実的だ」とする意見もある。