日銀は17、18日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決め、物価の見通しを引き上げた。黒田東彦(はるひこ)総裁は記者会見で「利上げの議論は全くしていない」と述べて早期利上げを否定した。
2022年度の物価上昇率見通しについては、従来の0・9%から1・1%へ、23年度は1・0%から1・1%へとそれぞれ微増させた。民間機関では、最近の海外での原材料価格などの上昇から2%近い上昇を見込むところもある。
経済全体の平均的動向を示す一般物価は、個々の価格情勢ではなく、総供給に対して総需要がどうなるかがポイントであり、その意味でGDPギャップ(実際のGDPと潜在GDPの差)の動きが問題になる。これはマクロ経済の基本だ。
筆者試算によれば、GDPギャップは21年7~9月期で40兆円程度、GDP比で7%程度あると思われる。GDPギャップがない状態でインフレ率が2%程度になるように試算しているので、今の状況ではとてもインフレ目標2%を達成するようには思えない。
日銀の物価見通しでは、コロナ後の需要拡大、政府の対策による官民需要増、日銀の金融政策による民間需要増を見込んでいるはずだが、それでもインフレ目標達成にはならない。一時的な要因で2%達成の可能性はないわけではないが、安定的な達成はできそうもない。