欧米の政策金利引き上げが迫る中、日銀も金融緩和から引き締めへの転換を意識してきたようだ。利上げ以外にも日銀の選択肢はあるが、日銀関係者は「実行するとなれば財務省と正面からぶつかる覚悟が必要だ」と心配している。
日銀は低金利政策の一環で、10年物国債の流通利回りを0%前後でコントロールしているが、市場関係者の間では、国債利回りのコントロール対象を5年に短縮する案がささやかれる。国債金利の固定ポイントを10年から5年に移せば、コントロール対象から外れる10年国債の金利は欧米になびいて上昇し、政策変更宣言なしのステルス(見えない)引き締めと同じ効果がある。
ただ、短期金利上昇に備えて財務省は長い年限の国債による資金調達を増やし、国債の平均償還年限を10年近くに伸ばしたばかり。そこに日銀が金融調節の手を離せば10年国債の金利が急上昇し、国の利払い負担急増は必至。「来春の新総裁人事を前に、日銀は財務省を刺激するのを避け、結果として金融緩和を続けるしかない」というのが市場関係者の見方だ。
【2022年1月21日発行紙面から】