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時代の波頭に乗る文化人をねっとり批判 松本清張著「黒い樹海」(カッパ・ノベルス、1962年)1/2ページ

「黒い樹海」表紙(カッパ・ノベルス、1962年)
「黒い樹海」表紙(カッパ・ノベルス、1962年)

今、東京の映画館、ラピュタ阿佐ヶ谷では「日本推理小説界の巨星 松本清張をみる」(2月19日まで)を開催中。「ゼロの焦点」と「黒い樹海」を観に行ったが平日昼間の上映回もシニア層でほぼ満席だった。後方座席に座ると、前には「白髪」「叩頭」「白髪と禿げ頭のコラボ」が順ぐりに並ぶ。

ひとくちにシニア層といっても清張の読者層は広い。60代中盤にさしかかった私の中学生時代を思い起こせば、近郊書店で新書棚を占拠していたのが清張を筆頭に梶山季之や黒岩重吾などカッパ・ノベルス一群。クラスでミステリーが流行り始めていたが、対象は創元推理文庫などの海外もので、当時はいわゆる社会派に手が伸びていない。

昭和30年代以降ベストセラーを連発した清張作品は同時代のサラリーマンが主要読者層で私の親世代だった。しかし私もその後「昭和史発掘」などから入って清張作品に没入した。

彼の作はほぼ読みきった気でいたが今回「黒い樹海」には初めて触れた。旅行中事故死した新聞社文化部女性記者の妹、笠原祥子が姉を継ぎ入社する。上司から常連執筆者を紹介されて回るが、彼ら文化人に向ける清張のねっとり視線の筆致は著者ならでは。冒頭から胸がわくわくしてくる。

生け花の大家、佐敷泊雲を訪ねると雑誌社が撮影準備中。数人の門弟が気ぜわしく作品修正に動き回るが佐敷は微動だにせず小声で修正の指図をするばかり。デザイナーの宇野より子は祥子の上司には「お茶でも飲みましょうか」と話すが彼女には目もくれない。「紹介のないうちは、絶対に相手を認めない、といった態度らしかった」と描かれる。

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