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桜の代表格と言えば、日本各地に植えられているソメイヨシノだ。江戸末期から明治期に、染井村(現在の東京都豊島区駒込)の植木職人が「吉野桜」などと呼んで全国に売り出し、後にソメイヨシノと名付けられたとする説が有力という。JR駒込駅周辺でゆかりの場所を訪ね歩いた。
染井吉野桜記念公園は駅にほど近い、本郷通りに面した場所にある。園内には、ソメイヨシノの原種とされる、エドヒガンとオオシマザクラが植えられている。染井と桜との関わりを示す記念碑もある。
この地は江戸時代、巣鴨とともに花卉(かき)や植木の一大産地で、多くの植木屋が住んでいたという。当時の文献は、染井を桜草やツツジ、菊の産地として紹介した。
区立郷土資料館によると、ソメイヨシノの誕生については詳しくは分かっておらず、駒込で誕生したと明確に示す資料は残っていない。
学芸員の秋山伸一さんは「さまざまな文献から、18世紀後半ごろに人の手によって誕生したか、偶然に見つけられたものが、染井の職人によって売り広められ、それにちなんで植物学者が名付けたとみられます」と話す。
染井通りから染井坂通りに入って歩くと、住宅街の中に突如、立派な門と蔵が現れる。「門と蔵のある広場」だ。染井を代表する植木屋だった丹羽家の邸宅跡で、津藩藤堂家下屋敷から丹羽邸に移築された門と、昭和初期に建てられた鉄筋コンクリートの蔵が立ち、往時の隆盛をしのばせる。現在は公園になっていて、保育園児たちがにぎやかに遊んでいた。
帰りがけにJR山手線の線路沿いに立つ一軒家の「桜キッチンカフェ」に入った。福島県出身の永山達也さんが2017年、長年暮らす駒込の地域に貢献したいと、桜をテーマにオープンした。桜の絵やタイルで彩られ、春は多くの花見客が訪れるという。
【メモ】奈良県の吉野山のヤマザクラが古来「吉野桜」と呼ばれていたため、混同を避けるために「染井」を冠したという説もある。