
ホームレス生活を始めて1週間が過ぎた。もっとも懸念していた食料に関しては、炊き出しやボランティアの人々の助けによって何とかなるどころか、満腹感を味わえる日も珍しくない。
しかし、ホームレスも人である。人によって胃袋の大きさは変われば、食う量も変わる。都庁下の路上に布団を敷いて寝ている私のとなりには、黒綿棒(私が付けたあだ名)というホームレスがいる。彼はいくら食べても腹が満たされないようで、もう夜の8時だというのにこれから食料を探しに代々木公園まで歩いていくのだという。
「僕はちょっとしたフードファイターくらいには食べるのでね」
自分でも面白いことを言ったと思ったのだろうか、黒綿棒がフフッと笑みを浮かべている。私の食料袋には炊き出しで余ったものたちで備蓄ができているが、特にすることもないので付いて行くことにした。
空のペットボトルを片手にサンダルをつっかける。代々木公園までは往復で1時間の道のりだ。途中でペットボトルに水をくみながらダラダラと歩いて行くのだ。