BSテレビ東京の番組『武田鉄矢の昭和は輝いていた』では、少し前に小坂明子の「あなた」(1973年)を取り上げていた。「あなた」は幼少期からピアノを弾いていた小坂明子=顔写真=が16歳で初めて作った曲で、約165万枚の大ヒットを記録した。「もしも私が家を建てたなら~」のイントロで始まる曲を誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。森山良子、岩崎宏美、徳永英明など数多くのアーティストにもカバーされている。
もともとは、「学生街の喫茶店」などのヒット曲があるフォークグループ「GARO」に歌ってほしくて小坂が書いた曲だそうだ。ただ紆余(うよ)曲折があって結局曲調を変えて小坂自身が歌うことになった。
武田鉄矢は「これだけのヒット曲になると初めて聞いたときの情景を覚えている人が多いはずだ」と語っていたが、まさに私の場合もそうだった。当時、私はその年の大学受験に失敗して予備校に通う浪人生だった。受験勉強に前向きに取り組む意欲もなく10代なりのやさぐれた気分を抱えていた。
そのモヤモヤした気分を解消するためかパチンコ店や映画館によく出入りしていた。生まれ育った神戸新開地は昔からの歓楽地で各種の飲食店や映画館、演芸場、パチンコ店、レコード店などが本通り沿いにずらりと並んでいた。家から歩いて5分で行けるので、散歩がてらにブラブラすることも多かった。