深夜のラジオ番組から流れる曲は「ルルル~、ラララ~」と女性の澄んだ声で迫ってくる。何を歌っているのか分からないが、わけもなく神経がくすぐられる。最後にようやく歌詞がわかる曲だった。
ラジオ局に問い合わせが殺到したそうだ。あまりの評判に1969年、レコード化されたのが由紀さおりの「夜明けのスキャット」だった。
発売されると瞬く間にヒットして、なんと最終的には150万枚のミリオンセラーになり、その年のNHK紅白歌合戦でも歌われた。
この曲を作曲されたのは、いずみたくさん。作詞は昨年、文化功労者に選ばれた山上路夫さん。このコンビで作られた67年の佐良直美「世界は二人のために」も最小限の歌詞で作られている。
「愛、あなたと二人」で始まる歌詞は実にシンプルで、ドラマ背景などまるでない。究極のラブソングだ。この曲も120万枚を売り上げ、佐良は日本レコード大賞の新人賞を受賞。その年の紅白にも出場している。
この2作でほぼ300万枚を売り上げたわけだ。これほど言葉の少ない歌詞とメロディーの合体で売れたものは他にないだろう。半世紀たった今と比べたら実に面白い。