
2025年には高齢者の5人に1人は認知症になる(厚労省資料より)。近年、認知症は腸内細菌と関係があり、食事内容を見直すことで腸内細菌叢(そう=多種多様な細菌の集まり)が変化し、予防につながる可能性が示された。
「認知症は高齢になって当然発症するわけではなく、中年期から脳は徐々に変性します。そのことに腸内細菌叢が関わると考えられるのです。腸内細菌分類でエンテロタイプ1群(バクテロイデス優位群)を保持している人は、認知機能が低下していることが、私たちの研究でわかりました」
こう話すのは、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)もの忘れセンター副センター長の佐治直樹医師=写真。2016年から「もの忘れ外来」の受診者の協力を得て、認知症と腸内細菌の関係をさまざまな角度から研究している。
「認知症は、大脳白質病変や脳萎縮と関連しますが、これらは腸内細菌とも関係していました。大脳白質病変の主な原因は、加齢や高血圧ですが、それとは別に、腸内細菌やその代謝産物も関与している可能性があります」
大脳白質は、脳内の神経線維が束になっている部分で、末梢の細い血管が詰まるなどして血流が悪くなると変性する。これを大脳白質病変という。原因は加齢や高血圧に伴う動脈硬化が関与するが、それ以外に腸内細菌叢の変化の影響を受けている可能性がある。しかも、脳の容積が減少する脳萎縮にも関与するので、腸内細菌を侮れない。