ジェームズに中国の恩恵
姚明氏のおかげもあって、バスケットボールは中国で非常に人気が高い。NBAの試合を視聴する人は実に4億人以上と全米の人口を超える。結果として、中国におけるNBAの事業規模は50億ドル(約5760億円)相当にもなる。
ジェームズはこの恩恵を大いに受けている。年収5600万ドル(約64億5400万円)のうち3200万ドル(約36億8800万円)はナイキとの契約金で、同選手のシリーズのシューズ売り上げは60億ドル(約6915億円)以上。彼はナイキと10億ドル(約1152億円)以上とも言われる生涯契約を結んでいる。ジェームズが中国に対して批判めいた言葉を発しようとしない背景には、このような事情がある。
だがカンターは違う。
「金よりも道徳心を選べ」と彼は言う。「声を持たない人の代弁者になれ」
スター選手が政治的主張のために命を賭けるのは珍しい。
だがカンターは決して道徳的にいい人ぶっているだけの選手ではない。昨季、ポートランド・トレイルブレーザーズとの2年総額1000万ドル(約11億5200万円)の契約期間が終わり、活躍の減少とともに今季はセルティックスの控え選手として260万ドル(約3億円)で契約を結んだ。彼は政治的信念のために何百万ドルもの代償を支払った。例えばナイキは彼とのシューズ契約を拒否している。
カンターはスイス生まれのトルコ人で、イスラム教徒である。2016年にトルコでクーデター未遂が起こった際、エルドアン大統領を「今世紀のヒトラー」と批判する発言をしたため、トルコ政府は逮捕状を発行し、彼は国外に逃れた。父親はテロリストの疑いをかけられ一時身柄を拘束され、親子関係は解消させられている。カンターは昨年米国への亡命が認められ米国籍を取得し、名前をエネス・カンター・フリーダムと改名した。