
2週間過ごした都庁下の路上を出て、上野駅前に着いたのは昼の午後1時ごろであった。
上野という街にはなじみがある。私は学生時代、上野のとあるマッサージ店で住み込みのアルバイトをしていた。駅正面玄関口前の通路に段ボールを敷き、寝床を並べていたホームレスたちを見るたびに、将来の不安に駆られていた記憶がある。
屋根もしっかり付いており、雨風もしのげそうなので、私もこの場所で寝ようと向かってみるも、ホームレスの姿はひとりも見当たらない。
すぐ近くにある上野公園にはバブル崩壊後の不況時、600人を超すホームレスが小屋を立てて暮らしていたという。しかし今の時代、新宿中央公園しかり、上野公園しかり、都内の公園に小屋など立てようものなら、すぐに警備員と警察官が飛んできては立ち退きを命じられる。
小屋を立てられない公園など、ホームレスにとって何の魅力もない。路上に寝床を構えるうえでもっとも重要なことは、雨風をしのげる屋根があるか否かであるからだ。