
英国に続いて、世界で2番目の孤独・孤立対策担当大臣を創設したわが国にとって、孤独・孤立の本質とは何かが問われている。作家・五木寛之さんが、長い間その教えに共感を抱いてきた親鸞への思いを、自らの半生を振り返りつつ一冊にまとめた。 (文・たからしげる/写真・飯田英男)
出会いが本題の講義録
――本書は、新潮講座で少人数の方々に語りおろした話がもとになっていますが
「これまでにずいぶんたくさん小説やエッセイを書いてきましたが、いちばん大事なことは、声に出して話すことだと思っているんです。仏陀は80年の生涯を通じて、問答という対話と、説法という講演をして歩いた人でした。本は一冊も出していません。その教えを聞いていた弟子たちが、最初は記憶して、やがて歌に替えたり、集会などを開いたりした。そのうち活字にもなって、仏典が生まれてきました。真宗では特に、聞法(もんぼう)といって聞くことが大事にされています」
――新潮選書としては初登板ですね
「はい。自分がどのようにして親鸞という存在と出会ったかを本題とした講義録のようなものです。ぼくの講義は学者のものとは違って、体験談というか雑談というか、私的な喋(しゃべ)るエッセイみたいなものですが、それをどちらかというとアカデミックな本が多い、ぼくも愛読しているシリーズの新潮選書で発掘していただきました。本になって、本当にうれしく思っています」