
ミュージカル映画の金字塔をスピルバーグ監督が満を持してリメークした。「ウエスト・サイド・ストーリー」は、「ロミオとジュリエット」から着想して、バーンスタインの音楽により1957年にブロードウェーで初演、61年に映画化され絶賛されている。相当、ハードルが上がる中で、〝分断〟に抗う悲恋物語をキレのあるダンスと音楽、生々しい映像で見事にアップデートした。
ニューヨークのスラム街。不良グループのポーランド系ジェッツとプエルトリコ系シャークスが縄張り争いをしていた。その対立にトニー(アンセル・エルゴート)とマリア(レイチェル・ゼグラー)の恋は翻弄される。時代設定やストーリーはオリジナルをほぼ踏襲したまま、迫力を増すスパイスが随所に。
マンボの群舞が圧巻の「アメリカ」では、女性陣が主導的にプエルトリコ系の若者たちを率いて疾走し、ストリートをダンスが横溢する。今はやりのゲリラ的な雑踏ダンス〝フラッシュモブ〟の先駆けのように。
オリジナルでプエルトリコ系リーダーの恋人アニタを演じた90歳の現役女優、リタ・モレノがトニーの働く酒場の店主役で登場するのも見どころ。切々と歌うアノ名曲(お楽しみに)の歌詞が、改めて世に問いかけるテーマは重い。
オリジナルでは肌をブラウンに塗った白人俳優を起用したが、本作ではヒスパニック系が多く登場。躍動感あふれる名曲を指揮するのは、ベネズエラ出身の天才ドゥダメル。こわだり満載だ。 (中本裕己)