定年後の居場所

社会生活用の実名のほか、個人生活用の〝芸名〟持って自由に動こう 名前におしゃれをして、自己催眠をかけて「楽しむ」1/2ページ

小説家遠藤周作の『読んでもタメにならないエッセイ 周作塾』(講談社文庫)を手に取ってみた。学生時代には彼の本をよく読んだので懐かしさもあった。楽しい人生をおくるためのヒントを満載した軽妙なエッセイ集だ。本の冒頭のタイトルは、「名前を二つか三つ持とうよ」である。

遠藤周作という名前は堅物を想起させて面白くないので、狐狸庵という名前を彼は持った。ある日、三島由紀夫から「なぜ、そんな年よりじみた名をつけたの」と聞かれて「そのほうが、生きかたが楽ですからね」と答えた。

遠藤周作では「沈黙」や「イエスの生涯」などの重いテーマの小説を執筆して、他方、狐狸庵としてはエンターテインメント小説やユーモア小説を書き、素人劇団をつくったり音痴の合唱団を結成したりした。それによって人生の探求心と生活の好奇心を併存させて、人一倍生きた気持ちだと語っている。彼は社会生活用の実名のほかに、個人生活用の名前を少なくても一つか二つは作ることを勧める。同時にこの別名を本名と同じように大切にすべきだという。私はこの部分を読んで「なるほどそうだなぁ」とうなずいた。

私は40代後半に会社を休職して復帰した時に、その経緯を書いた本を出版できることになった。その際に名前をどうするかで迷った。一つは、会社には当面は伏せておきたかったこと、また今後は会社の役職や立場とは関係なく自分の腕一本で発信したいという思いがあって芸名(ペンネーム)を考えた。

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