それを克服したのがタルサ治療。超音波発振装置には10個の振動子があり、それぞれ独立して超音波が発せられ、自動で360度回転しながら前立腺組織の内から外に向かって加熱する。超音波発振装置の内部には水が循環しており、肛門にも冷却装置を挿入するので、尿道の粘膜や直腸の壁が熱のダメージを受けることはない。
タルサ治療は全身麻酔で行われ、治療時間は1時間弱。海外では日帰り治療も行われているが、札幌北楡病院の場合は3泊4日の入院期間で、治療費用は税込みで165万円になる。
「治療の適応は、がんが前立腺内にとどまっているステージⅡ期までになります。タルサ治療後に局所再発した場合には、再度治療を行うことが可能です。また、局所再発後に全摘手術、放射線治療のいずれの治療を追加することができる柔軟性の高い治療です」
タルサ治療は、国内ではまだほとんど普及していないが、将来的に保険診療で行われることに期待したい。 (新井貴)