日本の解き方

給与上げるには何をすべきか 個別価格上昇に右往左往せず、財政と金融をフル稼働させよ GDPギャップの解消が急務1/1ページ

2021年の1人当たりの現金給与総額(名目賃金)が月平均で前年比0・3%増と3年ぶりに増加した。今後も給与は上がり続けるのか。

賃金とインフレの話は経済学の中ではパラレル世界だ。賃金が労働の価格、インフレはモノ・サービスの価格だ。マクロとミクロという2つの面から見なければいけないのも同じだ。

ミクロからみれば、賃金もインフレも個別業種や個別価格の性格があり、個人差や業種差がかなりある。インフレも個別財サービスの差が著しい。ただし、その業種や個別財サービスの需給関係から決まるという意味では分かりやすい。

マクロから見ると、賃金やインフレは全ての人の平均、全ての財サービスの平均になるが、それらが決まってくる要因はマクロ経済学の仕組みが分からないと理解しにくい。賃金もインフレもマクロからみると、総供給と総需要で決まってくる。

内閣府が試算している総供給と総需要の差(GDPギャップ)でみてみよう。筆者も独自にGDPギャップを算出しているが、筆者は失業率がほぼ下限とされる2%半ばを達成するときにGDPギャップがないとして算出しているので、総供給は内閣府試算より2%程度高めになっている。その意味で、内閣府試算と筆者のGDPギャップは2%程度の差があるので、その点は留意してもらいたい。

内閣府による1月月例経済報告において、昨年7~9月期でGDPギャップはマイナス4・8%とみている。10~12月期は新型コロナが落ち着いており、GDPは伸びたが、今年1月以降、蔓延(まんえん)防止等重点措置を実施したので、今のGDPギャップはそれほど動いていないだろう。

この程度のGDPギャップがあると、マクロで見たインフレ率はそれほど上昇しないし、失業率もあまり低下しない。今の失業率は、雇用調整助成金で抑えている側面もあるので、雇用情勢もそれほど良好ではない。少なくとも賃金上昇が出てくるほどには強くない。

要するに、マクロで見た賃金は、失業率が低ければおのずと上昇するが、失業がまだ残っている段階ではそれほど上昇しない。失業率はGDPギャップ水準に依存するが、GDPギャップがまだ残り、しかも失業率自身も雇用調整助成金頼みであるので、目立って賃金上昇するほど、雇用環境は良くないのだ。

2019年の内閣府のGDPギャップ平均はマイナス0・2%だ。20年はマイナス5・4%、21年はマイナス4・3%だった。21年の賃金上昇率はかろうじて20年を上回ったが、新型コロナによる経済打撃でGDPギャップはまだあり、とても大きな賃金上昇を見込める状況ではない。

財政・金融政策のフル稼働により、GDPギャップの解消を図るのが急務だ。そうでないと、インフレ率も賃金上昇率も高くならないだろう。

ガソリン価格などの個別価格上昇を懸念して総需要抑制を図るのは間違いだ。ガソリン価格上昇にはガソリン減税のミクロ対策で、総需要は財政・金融政策で対応すべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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