緊迫するウクライナ情勢をめぐり、ドイツのオーラフ・ショルツ首相と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、モスクワで会談する。「16日にも侵攻」という報道が流れるなか、緊張緩和に向けたギリギリの協議を行うが、ロシア軍はウクライナ国境付近の兵力増強を続けている。この様子を、中国の習近平国家主席や、台湾の蔡英文総統はじっと見ている。ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島を併合した際、情報戦やサイバー攻撃を組み合わせて戦略目標を達成する「ハイブリッド戦」を展開した。ウクライナと台湾の連動が懸念されるなか、産経新聞論説副委員長の佐々木類氏は、中国による「台湾有事」でも警戒される軍事戦略に迫った。
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北京冬季五輪開幕直前の1月24日、台湾国防部は、中国軍の最新鋭電子戦機「殲16D」が初めて、台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入したことを確認した。同機は、レーダーや通信システムなどを攪乱(かくらん)・無力化する能力を持つ。
警戒すべきは、殲16Dの進入が、これまでの戦闘機や爆撃機による軍事的威圧や牽制(けんせい)で終わらず、本格的な台湾侵攻につながる兆候かもしれないということだ。本格的な侵攻といっても、中国軍による着上陸作戦など正規軍による攻撃ではない。「ハイブリッド戦」である。