古代、人類が金を装飾品などに使用し始めてから採掘された総量は、15万トンから20万トン程度、オリンピックプール3杯から4杯ほどといわれる。推計の数字だから、多少のずれはあるにしても、人類が手にした金はごくわずかだということだ。
すると、ここで疑問が浮かぶ。こんなに希少な金属(貴金属)なのに、なぜ世の中で普遍的に流通しているのかということである。
世界人口約80億人のうち、どれほどの人間が金を使用しているのかはっきりとは分からないが、金歯、結婚指輪、さらには延べ棒など相当な量の金の現物が「個人や各国政府で保有」されているはずである。その残りが世界市場で取引される。
それに対して、「ロンドン地金市場」はその「地金」という名前にも関わらず、実物の金地金の取引は一部だけで、ほとんどはブリオンバンク(貴金属取引を扱う銀行)の帳簿上で取引されている。これが一般的なペーパー・ゴールドと呼ばれるものだ。