実録・人間劇場

トーキョー路上編(8) 上野の手配師・京太郎 ネズミ、ゴキブリより厄介な輩 「俺が紹介する現場は自分の部屋もあるぞー」1/2ページ

意外に思うかもしれないが、都庁下の路上に暮らしていると、東京の中心だというのにゴキブリとネズミの姿を見ることはほぼない。ゴキブリは確か2匹ほど、ネズミに関してはただの一匹も見ていない。日本一生ゴミの多い街であろう歌舞伎町がすぐ近くにあるため、新宿中のゴキブリとネズミはそちらに集結しているのだろうか。

一方、都庁下から引っ越した先の上野駅前は、ゴキブリとネズミがウジャウジャいる。食いかけの食料を持っていると夜中にネズミがあさる。気付かずに翌日食してしまうと、えたいの知れない感染症にかかってしまう。

しかし、この場所のホームレスにとってネズミよりも厄介な存在が手配師である。手配師とは、街で仕事を欲していそうな男に声をかけ、肉体労働などの現場に斡旋することで紹介料を得ている者のことだ。上野駅前には、この手配師が10人以上、常に巡回し、労働力を探している。

早速、新入りのホームレスである私を見つけた手配師の京太郎が目の前にしゃがみ込み、「逃げられないぞ」といったまなざしで話しかけてきた。

「どうしたお前よー。こんなところに布団なんて敷いちゃってよー。遊びに来たのかー? こんなところによー、布団なんか敷いてたらよー、人に見られてばかりで嫌な思いしかしないだろー。働く気があるなら紹介するけどよー。俺が紹介する現場は自分の部屋もあるぞー」

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