見逃せないのは、中国が潜在的な敵の弱体化を狙い、「沖縄と仏領ニューカレドニアで独立運動をあおっている」と報告している点だ。
沖縄への関与は中国にとって「日本や在日米軍を妨害する」意味を持つと指摘している。沖縄の一部住民には、日本政府への複雑な気持ちが残り、米軍基地への反発も強く、中国に利用しやすいとしている。事実なら内政干渉も甚だしい。
日本には、国家機密の漏洩(ろうえい)や工作活動を防ぎ、違反者を処罰する「スパイ防止法」が存在しない。警察や防衛当局を中心に実態解明を進め、防諜に取り組む必要がある。
報告書はまた、中国は「独立派」と同様、「憲法9条改正への反対運動」や、「米軍基地への抗議運動」を支援しており、日本の防衛力拡大を阻止しようという狙いがあると指摘している。
中国による政界への浸透工作が明らかになったオーストラリアは2018年、中国など外国勢力による内政干渉の阻止を目的としたスパイ防止法を成立させた。
同じ戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」のメンバーである日本も見習うべきである。
■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『チャイニーズ・ジャパン』(ハート出版=表紙)、『日本が消える日』(同)、『日本復喝!』(同)など。