昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値が公表され、年率換算ベースで前期比5・4%増と2四半期ぶりのプラス成長だった。
年率の内訳は民間消費が11・2%増、住宅投資が3・7%減、設備投資が1・6%増、政府消費が1・3%減、公共投資が12・4%減、輸出が3・9%増、輸入が1・1%減と、民間消費のリバウンドに支えられたことが分かる。民間消費は7~9月期が3・7%減だったので大幅にプラスに転じた。政府部門はやや足を引っ張っており、輸出は持ち直した。
実質季節調整済みの実額GDPはコロナ以前のピークが2019年7~9月期の557・6兆円だった。21年10~12月期は541・4兆円とピーク時から16・2兆円、約3%も少ない。
内閣府の1月の月例経済報告では、昨年7~9月期のGDPギャップ(総供給と総需要の差)はマイナス4・8%とみている。この数字はあくまで内閣府のものであり、これがゼロになっても、インフレ率は2%にも達せず完全雇用も達成できないことに留意すべきだ。
10~12月期は新型コロナが落ち着いていた時期で、GDPが前期比1・3%伸びたので、GDPギャップはマイナス3%台半ばだろう。しかし、今年1月に多くの自治体で蔓延(まんえん)防止等重点措置が適用されたので、現状のGDPギャップの実態はマイナス5%程度ではないか。
この程度のGDPギャップがあると、インフレ率はそれほど上昇しないし、失業率もあまり低下しない。今の失業率は、雇用調整助成金で抑えられている側面もあり、雇用情勢は景気拡大につながる賃金上昇が出てくるほどには強くない。