なお、現在と46年前を比べると、日本は同程度の数値であるが、ノルウェー、英国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、ポルトガル、メキシコ、フィンランド、スウェーデン、台湾、韓国ではかなりの自国通貨安になっている。
日本の実質実効為替レートをみると、1990年代までの比較的高い成長期に円高、その後、「失われた30年」で円安となっているので、円高のほうがいい印象になっているが、前述の例で分かるように、経済成長との明確な関係は見られない。
ちなみに、ユーロ圏はユーロ以前は各国独自通貨のため、実質実効為替レートはそれぞれの動きで、ユーロ導入後は当然ながらほぼ似た動きになっている。だが、それぞれの国の経済活動は全く同じようにはなっていない。
こうしてみると、実質実効為替レートは対ドルなど2通貨のレートでは把握できない総合的な通貨の購買力を示す指標としては意味があるが、しばしばいわれる「通貨の実力」との表現はややミスリードではないか。
そう表現すると、国力や経済力までイメージしてしまうが、そこまでの「実力」はないだろう。その証拠に、日本よりはるかに自国通貨安が起きている他の国で、実質実効為替レートが話題になることはあまりなく、実際の外国為替市場の取引で指標となることもほとんどない。
46年前と比較して、自国通貨安になっている国は前述のとおり少なくないが、それらの国で特に大きな問題は起きていない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)