
「外務省は何をやっているんだ」みたいな批判をよく聞くが、逆の意味で「外務省は一体どうしたんだ」と思うことがあった。
先日、自衛隊幹部OBから「外務省発行の外交専門誌『外交』の最新号を読みましたか?」と連絡をいただいた。「『外交』1・2月号に掲載されている村野将(まさし)氏の論文は面白いので、ぜひ読んでみてください」というのだ。
村野氏は、米ハドソン研究所の研究員で、安全保障の専門家だ。その彼がオバマ元大統領の「核なき世界」についてこう書いている。
《「核なき世界」を掲げたオバマ政権は、米国が率先して安全保障における核の役割を減らしていくことで、他国もそれに追随して世界がより安全になっていくことを期待していた。しかしその後の十数年間で、世界は真逆の方向に進んだ》
バラク・オバマ米政権は、核兵器をなくして世界平和を実現しようとしたが、現実は逆効果だったとして、村野氏はこう続ける。
《ロシアは、西側諸国との軍備管理上の約束をことごとく破り、一四年には核による脅しをもちらつかせてクリミアを併合した。台湾への圧力を強める中国は、核戦力の備蓄・配備状況や運用の実態に透明性がなく、二一年には公開情報分析によって、二〇〇カ所以上のICBM発射施設を新設していることが発見された。(中略)北朝鮮の非核化は全く進んでいないどころか、ミサイル戦力のさらなる多様化に突き進み、連日発射実験を繰り返している》