今年に入って、北朝鮮が連続してミサイル発射実験を行い、その射程は日本全土を収めている。ウクライナに対するロシアの圧迫も、軍事力の背景があってのことだ。
《これらの国々は、核の脅しを背景に、米国が介入意思を固める前に通常戦力による現状変更を達成しようという、おおむね共通した戦略を持っている。つまり、米国とその同盟国は史上初めて、現状変更を意図する三つの核武装国を同時に抑止しなければならない状況に置かれている》
よって日本も、中国や北朝鮮のミサイル・核兵器に対抗するため「敵基地反撃能力」を保持せざるを得なくなってきているわけだ。村野氏も、従来の対米依存の防衛ではダメだとして、こう提案する。
《中国・北朝鮮のミサイル能力の増勢ペースに鑑みれば、もはやミサイル防衛と米国の抑止力だけに頼って日本を守ることは困難になった(中略)したがって、日本には残存性に優れ、相手の防空網を確実に突破できる地上発射型の中距離弾道ミサイルが必要となる》
外務省の専門誌が米国の核軍縮を批判し、敵基地反撃能力の保持を訴える論文を掲載しているのだ。時代は大きく変わってきている。
■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書に『日本人が知らない近現代史の虚妄』(SB新書)、『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)など多数。