技能実習生として来日したフンさんが、ウーバーイーツ配達員というビザでは認められていない違法な副業を見つけたFacebook上の在日ベトナム人コミュニティー。そこには、銀行口座の売買や偽造身分証の作成を誘う書き込みがいくつも投稿されていた。
こうしたコミュニティーは東京や大阪などの主要都市をはじめ、ベトナム人が多く住む地方都市など、エリアごとに設けられている。そこでは、日本語で書き込めばすぐに警察にマークされるような露骨に犯罪をにおわせる投稿だけではなく、ルームメートの募集や日本語に関するQ&Aなどのやりとりも盛んに行われており、来日歴の浅いベトナム人にとっては貴重な情報源となっている。
2020年の夏から秋にかけ、全国各地で、家畜や農作物窃盗被害が相次いだが、被害品との関連も疑われる大量のシャインマスカットや豚の塊肉などの買い手を探す書き込みも投稿されていた。在日ベトナム人社会をのぞき見することができるこうしたコミュニティーは、筆者のような稼業の者にとっても貴重な情報源である。
昨年8月中旬以降、都内の130店舗以上のコンビニやドラッグストアで、旧一万円札のニセ札が相次いで発見されるという事件が起きた際にも、ベトナム人通訳の力を借りて、コミュニティーからの情報収集を試みた。
この事件の犯人として、ベトナム国籍の男女3人が逮捕されたのは9月8日のことだったが、コミュニティー内で交わされる情報はマスコミ報道よりも先行していた。といっても、ニセ札犯罪に関わるやり取りがそこで行われていたからではない。在日ベトナム人の有志らが「特定班」を結成し、犯人に関わる情報を次々に投稿していたのだ。