ロシア軍の全面侵攻が続く祖国の現状を、東京都内在住のウクライナ人男性が案じている。独自の文化を持つウクライナは第二次大戦後、長年に渡り旧ソ連やロシアの圧政の犠牲になってきたと訴え、プーチン大統領は「スターリンに近いか、ヒトラーの生まれ変わりだ」と怒りを込める。
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西部リュボームリ出身のイェブトゥシュク・イーゴルさん(31)はロシア軍による攻撃で「大学時代に通ったり、遊びに行ったりしていた街が爆破された。プーチンやロシア人がもたらすのは破壊だけ。止める手段がないのは絶望的だ」と嘆く。
イーゴルさんはキエフ国立言語大学で日本語学を専攻、大学院在学中の2014年に親露派で汚職体質だったヤヌコーヴィチ元大統領を失脚させたマイダン革命にも参加した。留学のため来日し、システムエンジニアとして日本で仕事を続けている。
リュボームリの実家には両親が住み、首都キエフで勤務する弟の帰省中にロシアの攻撃が始まった。父親と弟は「プーチンの独裁政権下で暮らすよりは難民になって他国に住んだ方がましだ」と話す一方、母親は「自分の家を守りたい」と望み、隣国ポーランドに避難するか一家でも迷いがあると明かす。
ウクライナは第二次大戦後、長年ロシアの圧政に苦しめられ、特有の文化も失われた側面があるとイーゴルさんは訴える。「ソ連の支配に入って事実上の植民地になり、スターリン政権による人工的な飢餓(ホロドモール)で多くの人が亡くなった。映画監督や歌手、作曲家などウクライナ独自の文化を作ろうとした人が殺され、逮捕された。ウクライナの伝統的料理のボルシチもロシア料理だと思われ、ウクライナ国民は『田舎者で民謡しか歌えない人』というイメージを作られた」と語気を強める。