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背骨の首の部分にある上部7個の骨を「頚椎(けいつい)」という。その骨や周囲組織である椎間板(ついかんばん)や靭帯(じんたい)などが変性して、頚椎の中を通る神経を圧迫すると腕の痛みや神経障害(脱力、しびれなど)、歩行障害が現れることがある。主に「頚椎椎間板ヘルニア」「頚椎症性神経根症」「頚椎症性脊髄症」といった病気だ。
これらの頚椎変性疾患の神経障害が重症化すると手術が検討される。その術式は前方除圧固定術や後方からの除圧術が行われてきたが、2017年12月に新たな治療法として「頚椎人工椎間板置換術」が保険適用になった。当初1年間は認可された全国36施設で実施され、その後は施設・医師基準を満たし、講習会や手術見学などを経た施設が実施できるようになっている。
頚椎人工椎間板置換術とは、どんな手術なのか。20年5月から実施している総合東京病院・脊椎脊髄センター(東京都中野区)の伊藤康信センター長が説明する。
「頚椎人工椎間板置換術は、前方除圧固定術と同じように首の前方を切開して、頚椎の椎間板を取り除き、骨棘(こっきょく=骨のトゲ)を削って神経への圧迫を取り除きます。すると頚椎間にすき間ができます。前方除圧固定術は、そのすき間に人工骨や器具を挿入して上下の頚椎を固定します。一方、頚椎人工椎間板置換術の場合は、すき間に可動性のある人工椎間板を設置するだけで、上下の頚椎を固定しないのです」