/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/YNLFPRVZX5LGVBLIS43LUGKPUY.jpg)
前回に少し触れたが、淡島千景は森繁久彌とのコンビで数々の名作を生み出していく。「夫婦善哉(めおとぜんざい)」はその第1弾。これをきっかけに松竹を出て、フリーの道を歩む。
原作は織田作之助。読んだことがある方も多いだろう。昭和初期の大阪を舞台に、有島武郎の「或る女」や室生犀星の「麦笛」など文芸ものには定評のあった豊田四郎監督が手がけた。大店の道楽息子と芸者の粋な恋愛(?)模様を、戦後のなにわ情緒たっぷりにユーモアを交えて描く。
豊田監督は縦の構図に特徴があるといわれる。廊下や通りの位置取りを計算しつくした職人芸が味わえる。余談だが、豊田を有名にしたのは、石坂洋次郎原作の「若い人」(1937年)だろう。さらに58年には井伏鱒二原作の「駅前旅館」をヒットさせ、シリーズ化させた。