ガンジス川と呼ばれた時代はもはや足の踏み場すらない様相であったらしいが、今はほぼ限界集落である。私も自作の小屋を建てようと、空き缶を潰しているホームレスの男性に話しかける。
「私もここで寝たいのですが、誰に許可を取ればいいでしょうか」
こちらを向いたホームレスの眉はすべてそられており、青緑色のペンで描かれた眉は30度ほどの角度でつり上がっている。往年の歌舞伎役者みたいだ。
「そんなのいらねぇよ。どこで勝手に寝ようと誰も文句言わねぇさ。ただ俺たちみたいに小屋を建てると警備員がすっ飛んできてすぐに撤去されるぞ。昔からいる俺たちだけは認めてもらってるんだ。今から小屋は建てられねぇ」
ここ半年の間でも近所のホームレスが3人、生活保護を受けるなどしてこの場所を去ったそうだ。