もっとも、コロナ不況をどこ吹く風とばかりに大盛況なのが、中国人専用の風俗店である。
池袋駅北口一帯には、経営者、働く女性、客も中国人という風俗店が存在する。筆者はコロナ以前に、こうした風俗店の1つに潜入取材を試みたことがある。
その店は、JR池袋駅北口から徒歩3分ほど、中華料理店が1階に入るビルの上階にあった。扉を開いて中に入ると中年女性の店員に「初めてか」と聞かれ、うなずくと早口で「60分1万円、同じビル内にある小部屋か、近隣のホテルに移動してサービス開始」と説明された。
その後、サービスの詳しい内容について聞き出そうとしたところ、筆者の中国語の発音の悪さで日本人であることがバレてしまった。店内はちょっとした騒ぎになり、居合わせた女性従業員たちの罵声を浴びながら男性店員に力ずくで追い出されたのだった。
こうした中国人限定風俗店が、コロナ禍で職にあぶれた若い女性と、自粛生活の退屈を紛らわせたい男性を引き合わせる形で増殖している。
さらに取材を進めるとその独特で特異な実態が鮮明に浮かび上がってきた。
■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。