でも食べ物マンガの原作を書くときは、ちょっと腹が減っていた方がいい。「あんな店で、こんなものを、こうやって食べたりして」と想像すると食べたくなって妄想が膨らみ、面白くておいしそうな話ができる。そして書いていて実際、腹が減って困る。でも腹いっぱいで旨そうな話は、書けない。ハングリーが必要なのだ。
今食べたいのは、熱いご飯に瓶詰めのシャケフレークをのっけて、さらにその上にいくらの醤油漬けをスプーン一杯のせた「鮭の親子丼」。ああ、食いたい。バクバク食いたい!でもそんなの今、不可能。残酷。
というわけで、今週のベント酒もなんとか書き終えた。写真を添付して編集部にメールだ。読者の皆さんは今それを読んでいるわけで、変な感じである。
■久住昌之(くすみ・まさゆき) 1958年7月15日、東京都生まれ。法政大学社会学部卒。81年、泉晴紀との〝泉昌之〟名でマンガ家デビュー。実弟の久住卓也とのユニット〝Q.B.B.〟の99年「中学生日記」で第45回文藝春秋漫画賞受賞。原作を手がけた「孤独のグルメ」(画・谷口ジロー)は松重豊主演で人気(テレビ東京)。ミュージシャンとしても活躍。