
ロシア軍による残虐非道なウクライナ侵攻に対し、国際社会の批判が高まっている。日米欧は経済制裁で対抗しているが、世界経済への「返り血」や、中国の「漁夫の利」も懸念される。中国の脅威を受ける沖縄出身のジャーナリスト、兼次映利加(かねし・えりか)氏が寄稿した。
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ウクライナ侵攻から1週間が過ぎた。ウクライナ当局によれば民間の犠牲者は2000人超とも言われ、哀惜の念にたえない。日米欧は国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの銀行を排除するなど、次々と制裁を発表した。停戦への効果を期待するが、警戒も必要だ。
まず、ロシアに制裁を科した国々が、エネルギー不足や食糧危機に見舞われる危険性がある。
欧州は天然ガス輸入の多くをロシアに頼っており、供給停止となればエネルギー確保に支障が出る。英石油大手BPや同シェルがロシア事業からの撤退を表明した。シェルが撤退を決めた石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」には、日本の三井物産と三菱商事も参加している。
ロシアに近い中国では、一昨年から頻発している洪水や干魃(かんばつ)で、農作物の収穫量が激減している。人民には食糧備蓄の通達を出しながら、世界各国で大量の食糧を買い占めている。農業に不可欠な「肥料資源の輸出」も制限し始めており、日本での肥料価格は高騰している。