
阪神が新ストッパーと期待する前パイレーツの右腕カイル・ケラー投手(28)は、新型コロナウイルスの水際対策の緩和により、6日に来日した。朗報を受けて首脳陣が「開幕に間に合う可能性がある」と当て込む気持ちは分かるが、ちょっと焦りすぎではないか。
そもそもキャンプ不参加のため、誰ひとりナマの投球を見ていない。投球の映像は見たというが、実際とでは誤差が生じるのが普通だろう。「ましてやストッパーには無駄な四球を出さない制球力、クイック投法、牽制球やバント処理のうまさなどが求められる。そんな要素をパスして初めて合格ではないのか」と球団OBも楽観的な見方にクギを刺す。
昨年まで2年連続セーブ王と絶対的な抑えだったロベルト・スアレス投手(現パドレス)には、阪神入りの前にソフトバンクで中継ぎの実績があった。首脳陣も実際の投球を見ているから正当な評価を下せた。ケラー獲得の経緯とは違うのである。
新守護神の持ち味は193センチの長身から投げ下ろす最速157キロの速球というが、昨年の成績を見る限り安定感に欠けるのも気にかかる。32試合登板で防御率6・48はいくらなんでも悪すぎる。「原因は球種が少なく、単調になるからだろう。そこそこ球威はあるから投球回数と同じほど三振を取る代わりに同じほど四球を出すのは抑えとしてどうか」と先のOBは気がかりな材料も指摘している。
矢野監督はケラーが抑え失格の最悪の事態に備え、左腕中継ぎの岩崎を代役に指名しているが、1月の自主トレ中に新型コロナ陽性となり、調整が大幅に遅れた影響で実戦にはまだ未登板である。
どうも今季のストッパー問題にはコロナ禍絡みの受難が続く。不吉の前触れでなければいいのだが…。 (スポーツライター)