実際に現地へと足を運ぶ。いわゆる「軍用道路」とはいえ、決して道幅が広いわけではない。さらに冬季は除雪した雪が両端に高く積まれているので幅を狭め、歩道側の視界を遮る。
以前いた部隊でC経路を使っていたある幹部は「安全にはとにかく気を使いました」と話す。99式自走155ミリりゅう弾砲の砲塔では、車長が、腰の高さまで身を乗り出して、慎重に辺りを警戒する。そんな緊張感をつゆほども知らず、後続の車両がどんどんと追い抜いていく。
途中で右折を必要とする交差点に差し掛かる。安全確認のための自衛官が立ち、車両群をサポートする。その前を、「こんにちは」と大きな声であいさつしながら通り過ぎる下校途中の小学生たち。中には、車両に向けて大きく手を振る児童も。それに対し、緊張感がみなぎっていた砲塔上の隊員もにっこりと笑顔を見せて手を振り返す。
冬以外の季節で注意しているのが、車両の汚れだそうだ。
演習場で訓練を行った戦車などは泥にまみれている。そのままC経路に進出すると道路を汚してしまう。そこで演習場でしっかりと洗っていく。さらに、C経路通過後は、別の隊員が道路に水をかけ、汚れがひどければデッキブラシでこすり洗う。
自衛隊と地域が一体となった、不思議な空間が北海道の片隅にあった。