
プライベートのない避難所から、ようやく家族だけの空間に移れたと思ったら、次に被災者を待っていたのは、個々のスペースはほとんどなく、住人の生活音は丸聞こえで、夏暑く、冬寒い…あらゆる不便さを伴った仮設住宅での暮らしだった。
「本当に大変だった」「でも、いいこともあったね」―。元入居者らがそう振り返る悲喜こもごもの生活は、昨年10月、岩手県陸前高田市にオープンした「3・11仮設住宅体験館」でかいま見ることができる。
旧米崎中学校グラウンドに整備された応急仮設住宅を利用した同館は、当時の暮らしを再現した展示室のほか、1DK、2DK、3Kの計7部屋が残され、宿泊体験が可能だ(※宿泊の場合は市内の防災・観光プログラムへの参加が必須)。
ここに先月末、小社の記者2人とともに泊まってきた。
私は津波で被災したものの、仮設住宅で生活したことはない。他の2人も取材では何度も部屋に上げていただいたが、泊まるのは初めてだった。