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私が今暮らしているのは、隅田川沿いにある「首都高速6号向島線高架下」。そこから見える白髭橋をぼんやりと眺めながら1日が過ぎていく。最寄り駅の東武伊勢崎線「鐘ケ淵駅」からは徒歩17分。夜になると人通りはほとんどなく、ただただ静かで何もない時間が続く。
アウトリーチ(配って歩くタイプの炊き出し)をするボランティア団体にもらったお好み焼きを暗闇で食していると、ランニング中の女性(60代)が話しかけてきた。人通りのない真っ暗な道でいきなりホームレスに声をかけるなんて、なかなかの度胸である。
「あなた若いのにこんなところで何やってるのよ。ここにいる人たちはみんな人生捨てているのよ。何があったか知らないけど、すぐに出ていかないとそこの廃人と同じになってしまうわよ」
女性はそう言いながら私の15メートルほど先にいるホームレスを指さした。なかなか乱暴な決めつけであるが、確かに人生を捨ててしまっているようなホームレスはいるのだ。嫌な思いをして働くのはごめんだが、かといって生活保護を受けるまでの踏ん切りは付かない。その曖昧な気持ちのままなんとなく路上生活を続けているうちに、路上に一種の心地よさを感じてしまう。私は女性に言い返した。
「全員が全員廃人ってことはないんじゃないですか。やむを得ずっていうパターンだってあると思うんですよ。人に言わないだけで」