
心臓の手術は難しい。そのため、2018年にロボット支援下手術(ダヴィンチ)で保険適用された「弁形成術」(=心臓の弁やその周囲の形を整え、弁の機能を回復させる手術)も、全国的に普及しているとはいいがたい。だが、未来の扉は開かれている。
「ダヴィンチでは、高精度の3次元画像で弁の観察が容易です。ロボットアームは手振れもないので、正確な弁形成ができ、良好な結果を得ることができます。さらに進化したロボットの登場で、より安全で精度の高い低侵襲手術を実現したい」
こう話すのは、ニューハート・ワタナベ国際病院(東京都杉並区)の渡邊剛総長=顔写真。国内で最も多いダヴィンチでの心臓手術を行っている。
ダヴィンチで保険収載された僧帽弁形成術は、心臓の閉じなくなった僧帽弁を作り直す手術である。弁の不具合と形に合わせ、きちんと開閉できるようにするため、熟練技を要する。しかも、不整脈などの合併症を起こしやすい。そのため、6センチ前後の開口で行う小切開術どころか、かつては、のどの下からみぞおちまで25センチ程度大きく開いて行う手術でさえも、手術の難易度が高いといわれた。渡邊医師は、その難手術をダヴィンチを用いて1~2センチの穴4つの「キーホール」により15年以上も前から行っている。