無駄を嗜む

「無駄の塊」が放った危険な魅力 追悼、西村賢太さん 「人様に迷惑かけるな」の圧力が強い日本で“正反対の作風”がもたらすカタルシス1/2ページ

今年2月に急逝した西村氏
今年2月に急逝した西村氏

かねてから僕が敬愛する小説家の西村賢太先生が54歳で亡くなられました。非常に大きな喪失感に打ちひしがれています。

大学生の頃、小説『どうで死ぬ身の一踊り』を読んで以来、ずっと西村ワールドに魅了されてきました。芥川賞を受賞し映画化もされた『苦役列車』が有名ですが、それ以外にも琴線に触れる作品は枚挙にいとまがありません。

西村先生の小説は、自分自身とその周辺の人物をモデルにした私小説が中心です。先生の分身である北町貫多の駄目さぶりが愛らしい。物語のあらすじは、特にドラマチックな出来事があるわけではありません。しかし、主人公の言動がとんでもない。同棲相手にDVを振るう。家賃や借金を踏み倒す。やさしくされると増長する。しかもトラブルの原因はすべて相手が悪いから、というスタンスをごく自然に取り続けるのです。例えば、住み込みで働く洋食店で悪質な盗み食いがバレた際、俺がこれだけ働いてるんだから飲み食いして何が悪い、とまったく反省せず、逆に店主を面罵するのです。

50作以上を数える 〝北町貫多もの〟に一貫しているのは、生産性や社会的な意義が一切ないと感じられること。登場するツールは、必ずたばこと酒と風俗。まさに「無駄の塊」です。あそこまで非効率的・非生産的で、虚無を突き詰めた作品は他に類を見ません。

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