習国家主席は、実はプーチン氏との首脳会談で全面的な軍事進攻を示唆すらされなかったというのだ。すなわち、プーチン氏と一蓮托生(いちれんたくしょう)にされることは、中国にとってとてつもない「地政学的リスク」になりかねないと理解したのである。
それを決定づけたのは、ロシア国防省が同27日に核戦力部隊を大統領命令で「戦闘態勢」に置いたと発表したことだ。
こうして、習指導部は、ロシアがウクライナという「国家の主権」を否定する一方で、ウクライナを「主権国家」として見なすようになった。
だが、中国は依然として綱渡りを強いられている。準同盟関係にあるロシアの軍事侵攻に反対する、それともロシアの安全保障上の懸念に対して支援の手を差し伸べる、のいずれなのか。
「プーチンの戦争」の究極目標が、首都キエフの完全制圧によってウォロディミル・ゼレンスキー政権を転覆させたうえで、少なくとも併合したクリミア半島と、東部のドネツク、ルガンスク両州の独立であることは明らかである。
これが習氏の泣きどころである。新彊ウイグル、チベット自治区独立問題がブーメランとなって再燃することになるからだ。
王毅氏は全人代終了後に退任し、「親露派」の楽玉成外務次官が就任するという。中国はやはり「ロシア支援」にかじを切るだろう。 (ジャーナリスト・歳川隆雄)