
初めに、以前からこの連載を読んでくださっている読者の皆さまはご存じかと思いますが、このエッセーは、ロシアの文化や私を含めた普通の市民生活にまつわるお話、そして、時々自分たちの音楽活動について書かせてもらいながら、3年以上に渡って連載を続けてきました。
ですので、記事の内容がそういったお話に限定されることを、お察しくだされば幸いです。
先週、私は、エカテリンブルクから300キロほど離れた故郷の町に戻りました。
姉たちは結婚して他の州に暮らしていますので、60代前半の両親だけがこの町で自営業をしながら静かに暮らしています。
人口4万弱の小さな町です。故郷にいると昔と変わらず時が静かに流れていくように感じますが、そこにいる人々も皆明日を心配しています。
町に戻ってきた翌日の3月8日は国際女性デーの祝日でした。例年は春の息吹を感じさせるような休日なのですが、今年はそのような気分ではありません。
それでも、今では何倍もの価格になってしまったチューリップを何本か買って母に渡すと、彼女にようやく笑みの表情が浮かびました。
それは、今回町に戻ってきてから初めて見た母の笑顔でした。