3.「非軍事施設」攻撃の誤り
ロシア軍はチェチェンやシリアで病院や学校などを攻撃しており、常とう手段といっていい。シリアでは市場も狙った。食料品を買う人の列ができているので場所がわかりやすいからと指摘されている。こうした非軍事施設をターゲットにするのは民衆に厭(えん)戦気分をまん延させるためだ。
今回も市街地のアパートや市庁舎などをミサイルで攻撃しているが、逆効果になっている。特に病院への攻撃は決定的だ。3月9日のマリウポリの病院空爆では、当時女性や子供はいなかったとロシア側は強弁したが、国連のデュリジャック報道官が病院は無差別空爆にあい、女性や子供が当時いたことを確認したと発表。傷病者や病院、非戦闘員の保護などを定めたジュネーブ条約違反で戦争犯罪だと世界中から激しい非難が集中している。ロシアはもちろん同条約の締約国だ。
世界保健機関(WHO)は3月11日に、開戦から9日までに医療機関への攻撃を26回確認し、死者12人、負傷者341人と発表している。
成果を上げていないことから、ロシア軍は恐怖を植え付ける作戦をエスカレートさせざるを得なくなっている。その典型が自治体首長の拉致だ。3月11日に南部メリトポリのイワン・フェドロフ市長を拉致。13日には南部ドニプロルドネの市長も拉致したとウクライナのクレバ外相が公表した。
今後も自治体首長など象徴的な人物の拉致は続くだろう。意に沿わない人物は排除されるという恐怖を与えると同時に、後釜に意を受けた人物を据え、形だけの住民投票を行って占領の正当性やロシアへの帰属などを主張する意図だ。2014年のクリミア半島と同じことをやるつもりではないか。