4.少なすぎるロシア軍の兵力
ロシア軍はウクライナ軍を包囲して攻め込む「外線作戦」だから、守る側を大幅に上回る兵力を配置して敵兵力を分散させたうえで、どこかを集中的に攻撃し突破していくのが、これもセオリー。
しかし開戦直前、米国はウクライナ国境周辺のロシア軍は15~19万人としていた。これが主に5つの方向からウクライナに侵攻していったので、平均で1正面4万人以下になる。
これに対してウクライナ陸軍は約16万人とみられており、これに準軍事組織の国家親衛隊6万人前後と、今年になって組織された民兵組織の領土防衛隊約13万人が加わる。しかも「内線作戦」として包囲の内側にあるため、攻撃側よりも狭い範囲で補給を続けられるなどの利点があり、これがロシア軍より機能している。
15~19万人はロシア軍が投入できる兵力のほぼ全力というのが、多くの見立てだ。しかしこれでは少なすぎるのはロシア側も認識している可能性がある。3月7日付英紙タイムズは情報機関の連邦保安局(FSB)の内部文書とみられる報告書の内容を報じている。そこでは「ウクライナの最小限の抵抗に対処するためには後方支援部隊を除いた数だけでも50万人超が必要」とされている。
通常、兵站部隊は戦闘部隊の3倍前後は必要とされているから、全部で150万人が必要ということになる。しかしロシア軍は陸軍以外もすべてひっくるめて90万人前後。とてもではないが、侵攻自体が最初から無理という計算になる。
3月11日にプーチン大統領が外国からの志願兵を送り込む考えを示した。ショイグ国防相は志願者は1万6000人とし、シリアの人権団体は13日までに4万人以上が傭兵として登録したとしている。このこと自体が自ら兵力不足を認めていることにもなる。
=特別版4・ウクライナ戦争で犯したロシア軍8つの間違い(下)に続く (サンケイスポーツ・梶川浩伸)