ロシアのプーチン大統領は、同国から撤退した企業の資産を国有化する法案に署名した。他国の政府や進出企業は対抗することができるのか。
結論から言えば、既にロシアは戦争状態になっているので、早期の停戦などがない限り、対抗措置は事実上困難だ。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧米日が強力な金融制裁を実施しているので、非ロシア企業のロシアビジネスは回収が困難になった。加えて国際世論の批判もあり、撤退を余儀なくされている。その対抗措置として、ロシアは撤退すれば国有化するとしている。非ロシア企業からすれば、撤退すればこれまでの投下資本をドブに捨てることになるわけだ。
そもそも、海外投資はさまざまなリスクが伴う。これをカントリーリスクというが、特定の国の環境変化によるものだ。具体的にいえば、戦争、政情不安や経済危機、経済報復措置、洪水や火山噴火といった、政治・経済・社会・法規制・自然・技術などのさまざまな側面における変化だ。
国・地域のリスクは、経済協力開発機構(OECD)カントリーリスク専門家会合が、国ごとの債務支払い状況、政治・経済・金融情勢などの情報に基づき議論を行っている。日本では政府が100%出資している公的機関の日本貿易保険が海外投資への保険業務を行っているので、このOECD評価を基に随時、リスクカテゴリー表を公表している。
2022年2月7日現在の表をみると、AからHまでの8段階のうち、G7のような民主主義の先進国は当然ながらAであるが、中国・香港はC、ロシアはE、ウクライナはGだった。