
「どんな環境で育った若者も暮らしやすい社会にしたい」。昨年12月、伊勢崎市役所を訪れた男子生徒が、臂泰雄(ひじ・やすお)市長に思いを強く訴えた。
2010年のクリスマス。群馬県中央児童相談所(前橋市)に10個のランドセルが届いた。送り主が漫画タイガーマスクの主人公「伊達直人」を名乗ったことが話題になり、各地で同様の寄付が起き社会現象となった。

生徒はこのランドセルを受け取った1人。当事者としていつかは自分が困っている人の役に立ちたいと思っていた。そこで目を向けたのが、施設や里親の元を離れた「ケアリーバー」の問題だ。
親との死別や貧困、虐待といった理由により施設や里親の元で育てられる「社会的養護」の制度の対象となるのは、原則18歳(最長で22歳)まで。その後は公的な援助が得られず、孤独や貧困に陥りやすい。厚生労働省が昨年に公表した実態調査では、3人に1人が生活費や学費の悩みを抱えていた。
人気キャラクターの名に扮して寄付をする「タイガーマスク運動」の発信地である前橋市は、17年から独自に自立支援制度を拡充。ふるさと納税を活用し、施設や里親から巣立つ若者へ、20万円の現金給付や運転免許取得費用の補助をしていた。「伊勢崎市にも同様の制度ができないか」。生徒は里親女性(45)と昨年12月から市議などへ個別に呼び掛けを始めた。