故郷の町にいた先週には、半径1キロ以内に3軒あるスーパーのすべてで砂糖がなくなっていました。そのことに気づいた私が母に連絡すると、その後は2人して町中のスーパーで砂糖を探す羽目になってしまいました。
やっとのことで砂糖を見つけて帰宅する途中、母が1998年のロシア金融危機当時に見た光景を語り始めました。
98年当時もルーブルは大暴落し、ロシア各地で砂糖、塩、小麦粉などの買い付け騒ぎが起こっていて、もちろん故郷の町も例外ではありませんでした。
1人の小柄な年配女性が20キロ近くもある大きな塩の袋を2つ持って、スーパーマーケットから出てきました。
しかし、いくらも歩かないうちに疲れ果てて地べたに座りこんだ女性は「何て私は愚かなんだ。こんなにも塩を買ってしまって」と言うなり、あたりもはばからずに泣き出してしまいました。
「今でもその女性の絶望的な泣き声が耳に残っている」
そう言って会話を終えた母は、一瞬路肩に車を止めてフロントガラス越しから遠くを見つめると、再びエンジンをかけました。
「どんな状況にあっても、前を向いて生きていくしかないの。そして、1日も早く平和が訪れるように強く願いましょう」
幼なじみの医師イリーナと会ったときの彼女の言葉。
その声は、今も私の心の中で響いています。
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