ロシアのウクライナ侵攻を受けて、軍事や安全保障研究の重要性が改めて意識されている。日本の学術界でこうした研究が忌避されてきた背景や、今後どのように改革すべきかを考えてみたい。
日本の「非核三原則」は、しばしば「非核五原則」といわれる。①持たず②作らず③持ち込ませず―のほかに、④言わず⑤考えず―もあると揶揄されているのだ。④は言論の自由、⑤は学問の自由に反するが、筆者が役人当時は「非核五原則だから、言葉に気をつけろ」と言われていた。
日本の安全保障研究はまさに、「考えずの壁」に阻まれてきた。日本学術会議のホームページをみると、「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(67年)、「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月24日)がしっかりと書かれている。
学問の自由を守るべき日本学術会議が「考えず」を科学者に強いてきたのではないか。
ちなみに、憲法23条で「学問の自由は、これを保障する」と定めている。一方、非核三原則は法律の根拠もない、首相の国会答弁に基づく政府の指針である。さらに、④言わず⑤考えずは、誰かが言い出したのかも明確でなく、単なる雰囲気でしかないが、⑤については日本学術会議が研究者に影響を与えているといえそうだ。