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家族信託は、生前対策・相続対策の手法として、さまざまな場面で活用されているという。前回に引き続き、具体的な活用事例について、司法書士法人松野下事務所、一般社団法人エム・クリエイトなどから構成される松野下グループ(東京都豊島区)の中島寛之氏(司法書士)に話を聞いた。
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財産を信頼できる家族に託し、託された家族が信託の目的に沿って、財産の管理・処分を行う家族信託。前回は、認知症などで判断能力が不十分となった場合の「財産凍結」リスクに備える手段としての活用事例、財産の二次相続以降の承継先の指定を事実上可能とするための手段としての活用事例(受益者連続型信託)の2つについてご紹介しました。家族信託は、ほかにもさまざまなケースで活用されています。今回は、別の活用事例をご紹介したいと思います。
「障がいのある二女がいて、親からの経済的な援助なしでは、生計を立てていくのが難しい。私の死後も、生活に困らないようにしてあげたい」というご相談の解決策としても、家族信託は活用されています。ご相談者が亡くなって、その財産の一部を相続したとしても、障がいのある二女には自分の財産の管理が難しく、生活費の引き出しや施設費用の支払いなど、二女のための財産管理全般を誰かが担う必要があります。仮に長女が二女の預金口座からお金を引き出そうとしても、本人の口座ではないので、引き出すことができないという問題があります。
そこで、ご相談者(委託者・第一受益者)と長女(受託者)との間で、親亡き後は二女(第二受益者)のために「財産の管理を長女に託す」信託契約を締結しておきます。これにより、長女が二女のために支障なく財産管理を行うことができるようになります。
また、80代の親が、自立できていない50代の子供の生活を支える「8050問題」。親の立場からすると、自立できていない子供の問題は、生きている間もそうですが、自分の死後のことを考えると、さらに大きな悩みの種となります。「自立できていない二男が心配。私の死後、自分で生活費を管理してやっていけるとは思えない。しっかり者の長男に二男の生活費も管理してもらいたい」といったご相談もあります。