病院の廊下では、サムが体の自由を奪われたのを逆手に取り、ボウリング場と同じ3人相手に策を弄する。ゼンマイ仕掛けのようなギクシャクした動きが効果的で、相手の同士討ちを誘い、3人を葬り去る。
駐車場では、多くの刺客とカーアクションを繰り広げる。ここでも体の自由を奪われたサムは、行動をともにする8歳のエミリーの協力で追っ手をたたき潰す。
クライマックス前の図書館では、多彩な武器を駆使した銃撃戦が見ものだ。垣間見える母子のつながり、エミリーを守ろうとする命がけの攻防、戦場になる書架や書庫。書物という人類の知を犠牲にする場面は、現実世界を暗示しているようでうすら寒さを伝える。
ラスト近くのハイライトは、ダイナーでの銃撃戦。絶体絶命の娘を救ったのは殺し屋の母とその仲間。残酷さをむき出しにした男たちに至近から銃をぶっぱなす。超スローモーション撮影は血みどろながらも現実感を失う仕掛けで、やがて美しい余韻をみせる。
損得勘定ではなく、女気で結束しているが、べたべたした湿度はなく、どこまでもドライ。ミルクシェイクのような甘さは1ミリもない作品だ。